千原温泉 千原温泉

 

震災・津波から1年あまりがたちました。 この冬、記録的な寒さと雪に襲われた日本列島。 被災地では、厳しい冬を頑張って耐え、遅い春。

昨年の今頃も全国で桜の便りが聞かれました。 今年も変わらず、花は咲き春は必ず訪れます。

被災地への思いと、支援は継続していきます。 現地の友人からは忘れないでほしい、という いっそう切実な声が届いています。 他人事としてではなく、寄り添いながらも 復興に向けた一歩一歩を自分のことのように 喜び合いたい・・そんな心境にあります。

西日本も南海トラフ大地震の恐れが増していると。 この日本、どこにいても災害のリスクから逃れる ことはできないことがわかりました。

想定外の言葉は自然の営みの前ではあり得ない。 それが身にしみてわかった昨年でした。

縁と絆。
遠い岩手・大槌の友人との被災をきっかけにした 交流はこれからも長く続けてまいります。

千原温泉はこの冬はさほどの大雪にも見舞われず なんとか春を迎えることができました。 お客様のおかげで、湯治場も続けていけること。 感謝、感謝でお迎えいたします。

    (4月10日)


津波から8ヶ月。雪と寒さに耐えた被災地に 再び厳しい冬がやって来ます。

10月。2回目の岩手県大槌町への支援訪問。 「大槌町消防団第2分団」団員で、寝たきりの お年寄りを避難させようとしたとき、津波に 巻き込まれ、奇跡的に助かった友人に現地を 案内してもらいました。

大槌町は三陸でも復旧が送れていると言われ、 今月になってようやく漁協の再開にこぎつけた ところです。

友人はワカメ養殖を主な生業としていました。 本来、3月になるとそれぞれの港や浜で収穫 したワカメを大釜で茹でる作業が始まります。 早春の三陸を彩る風物として親しまれてきた、 地元の人々にとっても「春来る」の風景。

その収穫・出荷の直前、津波がすべてを奪い去り 港という港、入り江から浜に至るまで壊滅して しまったのです。

しかし、一歩ずつ一歩ずつですが、漁の再開や ワカメの種うえ、さらに新巻鮭発祥の地という 矜持にかけた取り組みが進められています。

縁と絆。
遠い岩手・大槌の友人との被災をきっかけにした 交流はこれからも長く続けてまいります。

そして前回も紹介しました、大槌町への支援に ついて、あらためて紹介いたします。

◎「立ち上がれ!ど真ん中・おおつち」事務局
 代表 芳賀政和(芳賀鮮魚店) 
 〒028-1131
 岩手県上閉伊郡大槌町大槌14-153 
 大槌漁協サケ・マス人工ふ化場内
 連絡先 : TEL. 0193-42-5039
      FAX. 0193-42-5031
 HP「ど真ん中・おおつち」で検索

◎大槌町消防団を支援する会(代表 伊藤真悟)
 HP会の名前で検索

今年の冬は寒暖の差が激しいとか。 千原温泉も静かなたたずまいに還っていきます。 穏やかな地球の息づかいによって、癒されて いくありがたさ。謙虚に謙虚に。

「神の火」も含めた自然を、人間が自在に操る、 制御できるという過信は、そろそろ捨てる時期に さしかかっていることも合わせて。

人類たかだか数万年、その中で「記憶」などは わずか千年にも足りません。 そんな「一瞬」をもとに想定できることなど いかに限られているかも。



    (11月20日)


この数ヶ月のあいだ、ここに何を書けばいいのか、と。 ただ、出来ることからでも少しずつやっていこうと、 役に立つことを一つでも二つでも実行していこうと。

被災地の中でも復旧が遅れている岩手県大槌町の方から 現状をお聞きする機会がありました。 長いお話の最後に、
「4ヶ月以上たった今も、大槌の町を見るたび 夢を見ているのではないだろうかと思う」
ぽつり、そう言われました。
大地震と大津波は、東北から北関東までのおびただしい 数の町、村、大小の集落を一瞬にしてのみ込みました。 あのとき、雪や氷雨が降り寒さに凍えながら耐えてきた 人々はこの時期、容赦ない暑さに苦しめられています。 これまでの苦難、これからの苦労を思うに、他人事と すませているわけにはいきません。

がんばろう日本、がんばろう東北。 数え切れないほどこの言葉が氾濫してきたこの数ヶ月。 では人々の生活や生業が戻ってくるまで、これから どれほどの長い年月があの被災地で必要なのか、腰を すえて取り組む時期にさしかかっていると思います。

一人ひとり、この現実の前に何が出来るのか真剣に 考えるときです。この国が大きく変わっていくほどの 大きな災害と向き合うなかで、めざすべき方向とは。 気の遠くなるような、被災地のこれからに少しでも 思いをはせること。寄り添うこと。支えること。

縁あって、岩手県遠野市と大槌町の方とのつきあいが あります。 遠野市は三陸沿岸の被災地復旧を支援する前線基地に なっており、「遠野まごころネット」という大きな 支援組織が、大槌、釜石、陸前高田の支援を中心に ボランティアの派遣、物資の供給をはじめさまざまな 支援活動を展開しています。

大槌町は古くから「南部鼻曲がり鮭」がとくに有名で 三陸の海の幸に恵まれた港町です。 作家井上ひさし氏の「ひょっこりひょうたん島」の モデルの蓬莱島、小説「吉里吉里人」の舞台になった 吉里吉里という地区が実在します。 まだ瓦礫の処理も進んでおらず、復興のはるか手前で 苦闘しているのが現実です。

支援については、知人が住む所、友達のふるさとである、 かつて旅して思い出に残る場所である、など何かの縁や ゆかりをもとに、その町や村にポイントを絞った形で 長く支えていくというやり方もあると思います。

被災地各地で復興のためのオーナー制度や物販活動が 始まっています。

以下は、大槌町支援の一つです。

復興を願い、応援する
【南部鼻曲がり新巻鮭を注文し、絆の矢を放つ】
*納品は5年以内(復興をめざし気長に待つのです)
*一口5000円以上
*現金書留にて下記に注文

大槌町水産加工業振興協議会「絆の矢」事務局まで 詳しくはネットで「大槌町復興支援の会」と検索 してください。

ささやかですが、千原温泉も息の長い応援を続けて まいります。


    (7月28日)


2010年、1年前にこの国の可能性に期待してわずか と言うのに、なんだか寒く辛い年の瀬を迎えたようです。 自ら選んだ国の舵取りですから、無責任にどうこう言う 訳にはいかないかもしれませんが、それにしても・・・。 街も村も都会も山中の集落も、おしなべて先の見通しが きかない中で、じっと耐えて行くしかないそんな感覚。

この夏のただならぬ暑さも過ぎてしまえば遠い過去の事。 今は、冬枯れの山あいでうっすらと雪化粧した周囲を 見回しながら、冬ごもりの準備を済ませたところです。 幸い、このあたりでは夏の豪雨の被害もなく、秋の台風 の襲来もなかったため、気候的におだやかな一年でした。 気候の変動で、今まで経験したことのない激烈な気象が あちこちを襲っているのを聞いても、安心してはいられ ません。急峻な谷の底にあるこの湯治場ですから。

こんこんと湧き続ける地球の恵みにあらためて感謝です。 この冬、大雪に閉ざされる事がないようにと祈りつつ、 静かな湯治場を守っていく、そんな冬の毎日です。

【お知らせ】
年明け2011年1月11日から24日までは浴場の 改装工事を行うため、入湯は休業させていただきます。 なお、持ち帰り温泉は通常通り営業いたします。 ご不便をおかけしますが、ご協力お願い申し上げます。


    (12月20日)


ついに、この日本で政権交代が現実のものとなりました。 世界的に幅を利かせてきた、金融資本優位の市場経済が 今や強欲資本主義と言われ、指弾されるのは当然です。 生半可な知識によれば、生産と消費のバランスが大きく 崩れたときに、恐慌が起こるなどと言われて来たわけで、 100年に一度の「未曾有」の危機と繰り返し叫んできた 時の総理は、結果的に歴史に名を残す宰相となりました。 100年前も今も、カネの持つ威力はいささかも変わらず、 人間を支配し続けているという現実には、ただ自嘲のみ。

それはともかく21世紀の日本、とりわけ辺地・山間は 文字通り存亡の危機を迎えていると言っても過言ではない でしょう。 首都圏での人工過密の進行と対照的に、いまや過疎地に とどまらない数千の限界集落の存在は、諸外国でもあまり 例のないいびつな「国の形」であり、豊かな先進国である 日本が、実は急激に衰退していく兆しを先駆けて物語って いるように思えてなりません。

そこで、このたびの政権交代からおよそ1ヶ月あまり。 助走期間はそろそろ終わり、この国の未来にいかにプラス な方向が示されていくか・・・国民は待っています。 地方の中の地方である、山陰地方をはじめとして少しずつ でも確実に元気を取り戻していく、そんな光が見えて来る ことを政治に託していきたいと思います。

どんな地域でも、人の営みがあり動きがあり、自然とうまく 共生することで、風通しが良くなり永く続いていく。家と 同じです。住まなければ家もすぐに痛んでしまいます。 幸い、この島根には豊かな自然があり、ゆったりとした時の 流れを感じさせる里や集落、人の結びつき、助け合いがなお 残っているところです。

ところで、総選挙での島根県の投票率が全国一位でした。 実は戦後ほとんどこの県の投票率は衆参あわせても全国一位を 守り続けています。 それは「田舎の濃密な人間関係」とか「古い親方支配の残滓」 というマイナスの評価もあるかもしれません。 ただ、そういった関係が希薄になったこの時代に、いまだ続く 結いの精神ととらえても間違いではないと思うのです。

たとえ発展することはなくてもいいから、いわゆる田舎が存在 し続けて、人々の営みと結びつきがたゆまず流れて行くこと。 この峠を越えると、このトンネルを抜けると、人家が見えて 人里が現れる、というような風景が未来にわたって残ること。

山あいの一軒宿の湯治場からのささやかなお願い、今度こそ 政治に期待できるかな、とひとりごちているところです。


    (10月25日)


大げさですが、温泉の昨今について少し語りましょう。 一般的に古い温泉は昔ながらの引き湯のままですから、 その実績により、今まで通りのやり方が続けられます。 この千原温泉も、長い歴史に培われた湯治場のやり方で 昔と変わらない入湯が体験できるのです。

残念なのは、設備を更新したり、新設したりすることで、 新しい規制にしたがわざるを得ないという現実です。 このあたり、石見地方東部の温泉は、火山である三瓶山の 周囲にあたり、ユニークな泉質の温泉が多いところです。 おおかたの湯は、鉄分が多く含まれ、硫黄臭は少なく、 しかも濁り湯の温泉が湧いています。 温泉津温泉などは、まったくもって古くからの引き湯の ままで、入り方もなかなかに詳しいマニュアルがあります。 三瓶山周辺の温泉は比較的ぬるく、濃い成分によって自然の 文様が形作られ、また炭酸ガスを多く含む温泉もここ千原 をはじめ、あちこちにあります。

そんな全国的に見ても、独特の温泉が多く湧いている地域で、 せっかくの自然湯に、種々の規制の網がかけられることで、 その湯の良さが失われてしまうのは残念なことです。 たとえば、「循環」「塩素」など。 加温や加水による温度調節は入湯する方にとっては必要不可欠 なことですので、昔から行われていることです。 しかし、せっかくの源泉・濁り湯が規制によって台無しになる。 温泉の経営者も望んでそうしているのではないでしょう。

千原温泉の原始的な入湯は、夏場がもっともマッチした季節。 ぬるめながら、ふつふつと湧く湯は新鮮で生きています。 上がり際には、少しだけ肌寒さを覚えるかもしれませんが、 そのあと、芯から湯の効果が浸透している不思議な感覚に。


    (7月20日)


 この冬、とくに1月は思いも寄らない大雪となりました。 最近は真冬でもしめった重い雪が降ることが増えました。 そのせいで、この辺ではあまりなかった倒木が今年は あちこちで無惨な姿をさらしました。
姿だけではなく、道路におおいかぶさったりするので、 その撤去にずいぶん苦労しました。まったく温暖化は どんな形でこんな山あいに災厄をもたらすかわかりません。

そんな、冬もすっかり過去のこと。
先月から始まった高速道路の週末割引。場所によっては ずいぶん交通量が増えたとか。その代わり都市圏周辺では 大渋滞が起こって、まずは痛しかゆしと言ったところかも。 5月の連休には、この千原温泉にも全国からお客様が いらっしゃいます。割引のメリットはこのあたりでは 渋滞もさほどないため、大きいものがありますね。 温泉としても、ひそかな期待を持って待っているわけです。

連休中は天気もおおむね良好と予報では言っています。 どうぞ、お気をつけて旅行にお出かけください。ここ千原温泉 も皆様のおいでをお待ちしております。 なお、連休中は温泉脇の駐車場がわずかなため、混雑すること もありますが、温泉の奥側と手前側にも数台ずつのスペースが 確保されています。そちらもご利用ください。

    (4月29日)


 紅葉を楽しむちょうど良い季節だったのに、寒波が襲来。 先日の朝、思いがけず早い雪の便りに震え上がったところ。 何となく秋が短くなっていっているような、そんな感覚に。 のんびりして植えていなかったチューリップの球根を今日 あわてて植え終わったところです。さむさむ。

 ところで、目を覆うばかりの社会の出来事と政治の世界。 アメリカでは「チェンジ」のかけ声とともに新しい風が。 本当にチェンジしてもらわないと困るのですよ。世界中が。 アメリカの景気破綻は、経済のグローバル化の進行の中で こんな山間の湯治場にも影響を与える時代なんですから。

転じてこの国。まったく何ということなんでしょうか、と 憤りを超えてため息をつくしかない状況です。 しかるべき立場にある人にとっての言葉や立ち振る舞いが こんなに違和感を覚えるというのはかつてなかったことでは。 知性と品性というものが、上に立つ人々から急速に失われて いっているようです。 マンガを好きで読むおやじにけちを付けるつもりはないけれど、 中学生程度の漢字の読み書きは身につけてほしいものです。 マンガならせめて「つげ義春」の話くらいはしなくちゃ・・。

こんなことだから、世相があれ放題、ますますいやな感じの 社会になっていくのです。

 さて、そろそろ雪が積もる頃。季節はめぐっていきますね。 立冬から冬至が近づくにつれ、本当に短い昼間の日差しが うれしく、ほっとするひとときになります。

 朝8時までには、上がり湯を湧かしてお待ちしております。 谷底からゆっくりと立ちのぼる薪を焚く煙の風情もいいもの。 寒いのをちょっと我慢して、静寂の湯治をお楽しみください。 積雪情報には十分に注意して、リンクしている「九日市宿」 に載っている毎朝の写真を参考になさってください。


    (11月26日)


 この夏も、ゲリラ豪雨とかいう激しい雨に 見舞われた日本。 幸いにも、ここらあたりは大きな災害もなく、 夏が終わろうとしています。 9月も半ばになれば、朝の空気が今までとは 違った感覚で体を包み込んでくれます。

 ところで、9月というのは、デ・ジャヴどころか 同じ光景が昨年に続いてメディアに流れた月。 まったくひどいものですね。この国の政治は。 まぁ、この問題について、ここでいくら熱く なったって、仕方のないことです。 近いうちに行われるであろう総選挙が国民には ささやかだけど、大きな政治参加の機会。 この国の腐った部分を徹底的にさらけ出して 変えていくきっかけにできないものでしょうか。

 夏の間の疲れがどっと出てくるのが、今の季節。 あるいは、肌のトラブルなどに悩む時期でも。 秋の風に吹かれて、山の中までいらっしゃい。 つかってほっとする温泉が湧き続けています。

 昨秋から、毎週木曜日を定休日としております。 ご協力ありがとうございます。 遠方からのお客さまはなにとぞご留意のうえ、 おいでくださいませ。


    (9月19日)


この夏、中国山地の山あいは豪雨もなく梅雨明け。 しかし、中国・四川省の大地震のあとも、東北では 続けて2回も強い地震が襲いました。 とくに内陸直下の地震では、宮城・岩手山間の温泉 旅館が壊滅的な被害を受けました。 まったく、この自然の猛威の前にはなすすべもなく、 同じ、山あいの一軒宿としても、他人事とは考えられ ません。復旧と支援が拡がることを祈ります。 今や、日本中のどこで起きても不思議ではないと いわれる大地震。このあたりは活火山の三瓶山も あり、しばらくは大きな揺れは感じていないものの、 油断大敵、備えあれば憂いなし、で行かねば。

毎年のように、猛暑猛暑といわれて来ている昨今、 以前は涼しかった、谷間の宿も暑さには閉口です。 地球温暖化による影響は、単なる暑さにとどまらず、 雨の降り方、風の吹き方にも大きな変化が目立つよ うになってきた実感があります。 おととしはこのあたりも豪雨の被害がひどかったし、 これからは、あれ以上の激しい雨が降り続くことも むしろ確立は高くなっているのではと心配です。

加えて、このところ「苛立ち」「逆恨み」による 「誰でもよかった」という犯罪が激増しているのも 心が痛みます。 もはや、この日本でまったく安全である、といえる 場所はなくなったのではないでしょうか。 田舎、山間がほのぼのとした癒しの場所・・だけでは すまされない現状に暗澹とするこの頃です。

そして、ガソリン代の高騰は、お客さま商売の僻地 の温泉にとっては、厳しいものがあります。 車でしかおいでになれない不便な温泉だからこそ、 そのダメージは小さくないのです。 それでも、こんこんと変わらず湧き続ける温泉。 夏場はとくに、あせも、日焼け、かぶれなどに 大きな効き目のある温泉です。

千原温泉も厳しい現実にひるむことなく、この温泉 を必要とされる方々のために頑張ってまいります。


    (8月8日)


 梅雨入りの発表には、もう少しの6月なかば。
天気は、曇りや小雨が続き、梅雨といっても良いような 山陰の山あいのこのところの天気です。 今が夜明けが最も早い時期なのでしょうか。 朝4時を少し過ぎるあたりから、鳥のさえずりが始まり 前を流れる渓流では、「カジカ」が鳴き始めます。 空からは鳥のにぎやかな声、川からはカジカの澄んだ声。 初夏の山里は、こうして明けていきます。

 夕暮れの後には、2匹、3匹のわずかなホタルが 遠慮がちに川から空へ、木立から木立へとゆっくりと 舞うのが見えるのもこの季節。
乱舞にはほど遠い少なさですが、やっぱりホタルの舞は 幻想的。思わず時間を忘れて目を凝らしているほど。

6月から上がり湯を沸かすのはやめています。 その替わり、ぬるめの温泉はさっぱりとした湯上がり。 しかも、後からホカホカと体の芯からぬくもってくる のが実感できます。温泉の不思議な力ですね。

去年の秋から木曜日を定休とさせていただいています。 はじめてのお客さま、遠方からのお客さまはなにとぞ ご了解のうえおいでくださいませ。 入湯時間は朝8時から夕方6時までとなっています。 日の長いこの季節ですが、山奥の一軒家の温泉でも あります。とくに夕方の時間は営業時間内に入湯を お済ませになりますようお願いいたします。


    (6月11日)


 寒かった2月、3月がすでに遠い過去のようなうららか。 山あいの里にも、花前線が通り過ぎていきました。 この美郷町には、桜の名所がいくつもあって、訪れる方の 目を楽しませてくれます。
 桜が終われば、つつじやさつき。川向かいの畑の縁には シバザクラが咲き始めます。 待ち望んでいた春本番。心が浮き立ちますね。

 「九日市のしだれ桜」は、県道いっぱいに覆い被さる ほどの見事なもの。「おおち伝承館」の庭先に位置しており、 駐車場もあります。
 地元の人たちも、満開になる頃には、入れ替わり立ち替わり 見に来られます。夜間はライトアップされ、ロケーションから しても、さらに人気が高まりそうです。
 国道375号線からおいでの方に。
町内浜原地区のお寺の境内に咲く「妙用寺桜」も美しい春の情景。 「創菜料理・ゆるり」がお花見弁当を用意して、花見の会を催し たりとお寺参りを兼ねて訪ねてみては。

 温泉の入口にある千原八幡宮から沢谷駅までの桜並木や、 江の川沿いの国道375号に1キロ以上も続く桜並木も見事。 それぞれが地元のみなさんの手入れによって、山里の春を彩る までに育ちました。

 そろそろ、五月の連休も近づいてきます。お天気が崩れない ように祈るばかりです。
 また、連休中は温泉脇の駐車場がわずかなため、混雑すること もありますが、温泉の奥側と手前側にも数台ずつのスペースが 確保されていますので、そちらをご利用になった方がいい場合も あるかと思います。


    (4月21日)


年末から年始にかけて、ちょっとした寒波が襲来、 ちょうど千原温泉はお休みをいただいておりました。 この期間に、おいでになった方がいらっしゃったら ごめんなさい。
また、木曜日は定休日としておりますので、あわせて ご了承のほどお願いいたします。

正月恒例の「山の神さん」の神事も和気藹々とした 中で執り行われ、大寒を過ぎて寒さの底に入ります。 昨年に続いて、今年も雪の心配はあまりなさそうです。 やはり地球温暖化の影響は確実に進んでいるようです。

さて、昨年夏に公開された映画、「天然コケッコー」。 島根県石見地方の高校生たちを描いた秀作として、 この欄でも紹介しましたが、評価はなかなか高かった ようで、いろいろな映画賞を獲得しています。 ほのぼの感と、田舎の空気が隅々までしみわたった 画面に、みなさん必ずほっとされることでしょう。 さらに、島根県出身の錦織良成監督の島根三部作の 第二弾・「うん、何?」も近く公開される予定との こと。出雲地方の西側にある雲南地方でのやはり 高校生たちのドラマ。公開が楽しみですね。

そんなこんなで、2008年もあけました。変わらない 湯治場の風情を守りながら、お客さまをお待ちします。 ところで、この冬場は、上がり湯があるとは言え、 源泉はぬるいため、お客さまによっては入りづらいと 感じられる方もあります。 ひなびた一軒家の湯治場、設備もご満足ならないもの として、皆様をお迎えするしかないわけで、そこは なにとぞ事前にご了解になり、おいでください。


    (1月24日)


 昨年に続いて、まったく雪のない年の瀬になりました。 ゴアさんがノーベル賞をもらい、バリ島での温暖化防止 会期が大きく取り上げられるほどに、地球温暖化の進行は 私たちが考えているよりはるかに深刻なようです。 この湯治場も地球からの恵みを一身に受けている立場。 できることはできるだけ、という気持ちで取り組んで いかなければと思いを新たにしています。

 山間地の高齢化に伴い、「限界集落」という言葉が良く 聞かれるこの頃です。集落自体が消滅すると言うことは、 数百年にわたって存在したその社会、人々の歴史が埋も れてしまうことです。そして、社会のあちこちに空洞が 発生し、やがて全体に波及していくことです。 その影響は想像がつかないものです。なぜなら我が国が いまだ経験したことのない事態なのですから。
 この谷あいの集落もやはり過疎の村、若い人は圧倒的に 少なく、お年寄りだけの世帯もいくつかあります。 少子化の時代、日本全体でもこれから人口が減っていく 時代ですから、とりわけこうした山間の状況は簡単には 変えることはできないわけです。 そうであれば、ここにいる人たちが年齢とかに関係なく、 元気でいてもらえる仕組みを作るしかないでしょう。
 ここ湯谷(ゆんだに)は、縦に一本の道が走る細長い 形の集落で、いちばん奥に湯治場があり、人の行き来も それなりにあります。高齢の方が多いのは仕方ないけど まだまだみなさんお元気です。そんな地域がこれからも 元気であり続けられるような知恵を出していけたらと 思います。

この一年のご愛顧に感謝いたします。常連のお客さま、 遠方からのお客さま。病気、ケガなどで湯治においで の皆様。良いお年をお迎えください。
なお、年末・年始は休業といたします。


    (12月26日)


暖かかった昨年の冬と比べると、今年の冬は 駆け足でやって来ました。 中国山地のの山にもすでに初雪の便りが。 朝夕の冷え込みがぐっと厳しくなっています。 にぎやかだった千原八幡宮の秋祭りも終わり、 温泉の裏にある楓もいろづいては、風に散り、 冬の到来を思わせる木枯らしが吹きすさんで、 山あいは急速に冬へと足取りを早めます。

今年は石見銀山の世界遺産登録に沸きました。 登録されたとは言え、これから学術的な研究や 遺跡の整備は続けられていきます。 世界でも地味な登録遺産と言われていますが、 一過性のブームに終わらないように、地に 足をつけた保護を願いたいものです。

さて、千原温泉は木曜日をお休みとさせて いただくことにしています。とりわけ遠方の お客さまはご注意ください。 また、年末・年始も湯治場はお休みといたし ます。よろしくお願いいたします。


    (11月30日)


夏のわずかだったにぎやかさもあっという間に遠のいて、 驚くほど夕暮れが早くなる時期。秋もなかばに。 山道を通っていらっしゃる道端にも、小さな秋の風景が 目に映ることでしょう。

さて、また映画の話を。 「めがね」という映画が静かな人気を呼んでいるようです。 舞台は南の島・・おそらくは与論島あたりだと思います。 何の人物説明もなく、ちょうど海岸縁にあるホテルというか 宿での出来事がまったく淡々と映像でつづられていきます。 盛り上がりもなければ、事件やアクシデントもない、昨今の 過剰なドラマ仕立ての映画に比べたら退屈この上なし。 観ているうちに、波の音やらで寝入ってしまうかもしれない。 そんな映画ですが、観ているうちにうらやましくなるのです。 旅が退屈であるということは、普通はまず持てない感覚。 明るい日差しのもとでの「旅」の感覚と日常の繰り返し。 で、ある朝、雨が降っていると思ったら・・。 前回、「カモメ食堂」を取った女性監督の作品。 何と言っても、もたいまさこさんの存在感は圧倒的です。

そんな南の国の風景とは対照的な、山の中で谷の底ですけど、 もし、ぼんやりとしたひとときをお望みなら、人の少ないこの 時期の湯治場も「たそがれる」場所かもしれませんね。

木曜日をお休みさせていただくことにしております。 とりわけ遠方からのお客さまには、ご了解くださいませ。 湯治場は今年もそろそろ冬ごもりの準備に取りかかります。 まったくと言っていいほど雪の積もらなかった昨冬でしたが、 その反動で今年は要注意かも。


    (10月30日)


 7月は冷夏と思われるような雨続きだったのが、 8月はこの谷あいも連日30度を超える真夏日に。 それでも9月に入ると、朝の空気はひんやりと。 ミズヒキやつりふね草といった秋の花が道端に 咲き始めています。

ところで、島根県・石見地方を題材にした映画・ 「天然コケッコー」が静かな評判を呼んでいます。 浜田市・旧那賀郡・邑智郡邑南町の、のどかな 農村をロケ地に使って、のんびりとした雰囲気を 醸し出しています。 女の子が自分を「ワシ」と呼ぶのは、ちょっと 違うかな、と思ったりしますが、「行ってきます」 を「行ってかえります」と言うのは、このあたり でも同じです。ちなみに「ただいま」は「かえり ました」。何かほっとする挨拶言葉ですね。 盛り上がるストーリー展開があるわけでもないの ですが、後半の長回しのカットの連続は映画の 全体を支えているようで、何となく懐かしくも ほのぼのとさせてくれます。 ヒロインの家族がごろごろと昼寝しているときに、 「玉造毎日マラソン」の中継が間の抜けたように テレビから流れているシーンは印象的。 エンディングのテーマソングもさわやかです。

この秋から、毎週木曜日を定休日とすることに なりました。遠方からのお客さまはなにとぞ ご協力下さいますよう。

    (9月18日)


梅雨明けが待ち遠しい7月の半ば。今年も豪雨の被害が 九州から。さっそく被災地には心ばかりの支援を。 温暖化の影響か、雨の降り方や風の吹き方がこの数年、 ずいぶん荒っぽくなったような実感があります。 その地区の古老が語る「これまでずっと長い間、経験した ことのない豪雨と水害」、というのが全国的に共通した 災害のおき方になっていて、とても恐ろしいことです。

この千原温泉でも、昨年は大変な大雨と大水に見舞われ ました。心配なのは、すぐ前を流れるこんな小さな川でも、 いったん大雨になると、想像できないほどの濁流が逆巻く ように流れ下ること。住む者はただただ立ちすくむばかり。 本当に肝が冷えるとはこのことです。 今年は、豪雨にならないよう心から祈るばかりです。

いまの季節、ほっとさせてくれるのは、畑や道端の花たち。 畑にはアジサイに加えて、おおぶりの球根ものや宿根もの が雨にも負けず、すっくと立って目を楽しませてくれます。 野に目を転ずると、ユキノシタに変わってホタルブクロ。 白いふくよかな花弁がいかにも優しそうに雨に揺れます。 梅雨が明ければ、夏の花たちはいよいよ主役。グラジオラス、 鶏頭、コスモスなど。ミントの緑も夏にはお似合いです。

渓流のカジカの鳴き声も澄んでいて、さらに涼を誘います。 入湯上がりのひとときや、お連れあいの方をお待ちになる ときには、周囲をのんびり散策されるのも良いでしょう。 木陰や川端に立つと、ずいぶん気温が違うことに気づかれる ことでしょう。入湯後のさっぱりとした気分に浸って下さい。


      (7月12日)


祝! 石見銀山の世界文化遺産登録決定。 5月に登録の延期勧告という事態で、一時は登録も 危ぶまれていた石見銀山。地元や政府が一体と なっての巻き返しが実った結果です。 ポイントは、鉱山の跡地に植林を計画的に行い、 自然環境への配慮が江戸時代当時からなされていた 点だと言うこと。日本の先人たちの先を読んだ思慮と、 自然への畏怖、調和を重んずる価値観が認められた わけです。

この美郷町も、石見銀を瀬戸内の尾道に陸送する途中に ありました。出雲国境までは天領だったところです。 町内には草に埋もれた旧・銀山街道があちこちに残り、 粕淵地区には、江戸末期の本陣がいまも老舗の旅館・ 亀遊亭として残っています。 この登録を機に、歴史の道・石見銀山街道の研究や 散策路としての整備が進んでいくでしょう。

この数年、世界遺産への登録をめざして、大田市や 温泉津町では環境の整備が地元のみなさんを中心に 進められてきました。 世界遺産であるかどうかとは別にして、すでに石見 銀山の地元である大森地区は、落ち着いた街並みや 五百羅漢のあるお寺、緑の中の散策路など、一級の 観光地です。そのうえ、日本初の経済遺産として、 研究価値もきわめて貴重なものだとされたのです。 今年の夏は五月の連休以上ににぎわうことでしょう。

梅雨に入って、蒸し暑い天気が続いていますが、昨年 のような豪雨にならないことを祈っています。 この時期は、ぬるめの湯は、じっくりとつかるのに ちょうど良い季節。土日はやや混雑する時間があり、 ご迷惑をおかけするかもしれません。 ゆっくり湯治するには、平日の朝8時からおいでに なれば。


      (6月27日)


 大型連休中は、時間帯によっては入湯をお待ちいただく こともありました。わざわざおいでになったお客さまには お詫び申し上げます。今はまた静かになっています。
今年は長らくしまい込んでいた鯉のぼりを川向こうの 庭に泳がせて、五月いっぱいみなさんをお迎えしています。
 ツツジや樹齢100年を優に超える真紅のキリシマの大株、 その袂にはユキノシタの白い小さな花の群れも。

 このところ、島根県の観光が少しずつ盛り上がっている ようです。もちろん、メインは石見銀山。
 この連休中も全国各地から大勢の観光客が世界遺産登録 間近の石見銀山を訪れました。
 昨年の大渋滞の反省に立って、行政や地域のみなさんが 真剣に渋滞対策を考えた結果、「パークアンドライド」 方式による、離れた場所に設置した大型駐車場への車の 誘導と、バスでのピストン輸送が功を奏したようです。 新聞報道でも、狭い銀山地区の中は車の往来もほとんどなく、 お客さまがゆっくりとあるいて見学できたとありました。
 これからさらに増えて来るであろう訪問客への対応として 大きな成果を、とくに地元の方は感じられたことでしょう。

 それから、出雲大社に近接した出雲歴史博物館の開館。 荒神谷遺跡から発掘された、380本もの銅剣の展示には 誰もが圧倒され、古代の出雲大社の大きさを5人の建築家 がそれぞれの見解によって復元するという大胆な企画も。
 記念企画展には「海の正倉院」と言われる、福岡県宗像沖 に浮かぶ「沖の島」国宝がずらりと展示されました。 これまでは門外不出の祭祀関連の遺物とあって、考古ファン にはたまらない魅力。

 石見銀山街道に沿ったこの美郷町にも、例年よりは多くの 県外客が訪れ、活気に満ちた連休になったことは本当にうれ しいことです。ブームとして一過性で終わることのないよう、 逆に気を引き締め、どっしりと腰を据えて、この湯治場を 守り続けていくつもりです。

 上がり湯はまだしばらくは沸かしていきますが、これから の季節、晴れた暖かい日には、上がり湯に入らなくても良い くらいになっていきます。
 湯治場の湯はぬるいため、上がり際は少し寒く感じるかも しれませんが、服を着たあとには体の芯から次第にホカホカ とぬくもってきます。


      (5月11日)


 この冬は、結局10センチ以上の積雪もあるかないか。 こんな雪の少ない冬というのは、まず記憶にありません。 おかげで山は荒れずにすみましたが、その分、草たちの 伸びるのが早いこと。また、草刈り、草取りの季節です。

春の訪れはすぐかと思いきや、以外にも春分の日を過ぎて ずいぶん寒い日が続き、四月になってから忘れ雪が降ったり、 温暖化による気象の変動は激しくなるばかりのような。

 昨年もお伝えしたのですが、この温泉のある美郷町でも、 美しい桜が咲きました。
 禅寺の境内に数百年の樹齢を誇る「妙用寺桜」。地蔵様の おられる石段を登ったところで、枝を張りこぼれるように咲く 桜は、まさに荘厳。 創菜料理「ゆるり」が催したお花見会も盛況だったそうです。 お寺にお参りし花を愛で、古里弁当を頂く・・とびっきりの 贅沢な一日だったのでは。
 それから国道375号線を三次方面に進むと、江の川沿い の潮地区に、それは見事な桜の街道が続きます。浜原ダムの 新緑とあわせて楽しめる、お奨めのポイントです。

また、千原温泉のある沢谷地区には「九日市のしだれ桜」や 千原八幡宮のあたりの道路脇の桜並木。「ゆるり」のあたりも 点在する桜の花が楽しませてくれました。 さらに、県道から入って温泉に向かう道にも「坂根口の一本桜」 や、谷川に覆いかぶさる大きな桜。古いお屋敷の裏に霞のように 群れ咲くソメイヨシノなど。 そんな身近な所に咲いた美しい桜の写真を掲示して、お客さまに ご紹介するつもりです。

 春の嵐が吹き荒れると、そんな桜の花も散り果ててしまい、 チューリップやスイセン、芝桜と、今度は春らしい彩りで。 五月を待ちきれないように、ツツジやサツキ、シャクナゲが 谷の底を明るく染め上げてくれるのも、もうすぐ。

暖かくなりましたが、湯治場の湯はぬるいため、まだまだ上がり 湯を沸かしています。ただ、上がり際の寒さをちょっとだけ我慢 すると、やがてホカホカと体の芯からぬくもってきます。 上がり湯に頼るかどうかは、お客さまのお考え次第。

ゴールデンウィークは、狭い湯治場のため、入湯をお待ち頂く こともありますが、なにとぞご容赦ください。
 朝8時からお待ちしています。静かな湯治をお望みの方は 早い時間においでになればと思います。


      (4月16日)


とうとう、この冬は積もるほどの雪も降らないまま、 お彼岸を迎えることになりそうです。 今月に入ってから、割合に寒い日が続いているものの 根雪のない畑ではチューリップやフリージアなどの 球根から芽が出て、すくすくと育っているところです。

おかげで、昨冬のように雪解けのあとで、道路や駐車場の ゴミや落石を片づけるのに苦労することもありません。 雪のない冬は、生活するものにとってはたしかに楽なこと。

と、喜んでいるだけではすまされない別の現実も、静かに だけど急速に進んできているようです。 アメリカの大統領候補だったゴアさんが著した警告の書、 「不都合な真実」は、彼の立場を活かした情報収集によって 地球温暖化が、一般的にいわれているより、はるかに急速に 進行している、驚愕の事実を畳みかけるように明らかにして います。まるで近未来小説のモチーフのような。

この冬の異常というよりまさに「異様な」気候の現れが そうした警告が現実になりつつあることなのか、あるいは 想定の範囲内の気象変動なのか・・・。 映画にもなったこの「不都合な真実」は、地球上に最も 遅れて登場した人類が、地球そのものを汚し、侵していく 結果、自らにどういう報いが還ってくるかを、冷静にかつ 冷厳に突きつけているものです。 事実をベースにしているだけに、戦慄を覚えるほどです。

さて、湯治場は2月の半ばから小さなおひな様を飾って お客さまをお迎えしています。 早い春、もうじき、石見銀山街道にピンクのトンネルが 登場することでしょう。九日市のしだれ桜もお見逃しなく。 冬枯れの景色から、一気に花たちが咲き競う季節に。 日脚がぐっと延びて明るくなった、谷底の湯治場一軒。 何となく、心が浮き立ってくる毎日です。


      (3月14日)


大寒を過ぎて2月のはじめまでは寒さの底といいます。 しかし、今年の冬は本格的な積雪がここまでまったく ないという、かなり異常な季節となりました。
雪のない生活はたしかにありがたいのですが、それに してもここまで極端だと気持ちが悪いのです。
お客様や近所の方との会話でも、つい出てくるのは、 「こんなに雪が少ない年は、梅雨場や夏にかけて水害 や台風の被害が心配だ」。
やはり冬は、ある期間は根雪が野や田畑を覆って、虫の 発生や雑草の繁殖を防ぐという、当たり前のサイクルを 続けてほしいものです。
地球温暖化の影響がいよいよ激しい形であらわれるのでは ないかという不安も年々強くなっていることですし。

さて、1月の半ばに、この湯谷(ゆんだに)地区で「山の 神さん」という恒例の神事が執り行われました。
千原八幡の宮司さんのお話によると、この谷でも里山に 牛や馬を放牧していた頃、牛馬の安全を守っていただく 神様を放牧地の入口に祀り、年の初めに村人がつどって 一年の安全を祈願していたそうです。
その祠は今でも残り、近くの方がお世話されています。 ただ、近年は放牧する慣習もなくなり、祠の前での神事 は新年会をかねたものとして、各家の持ち回りに変わり、 今では集会所を使って行うようになりました。
ちなみに、山をお守りいただく神様、家を守る神様は 別におられるとのこと。
自然への畏怖と感謝、共存を生活の中に組み込んだこの 「山の神さん」が続けていけるよう。

その集まりでは、長く湯谷に住んでおられるお年寄りも 元気なお顔を見せてくれました。和気藹々と食べ、飲み 語らう光景は、まさに山里の宝でもあります。
お年寄りがお元気な里は落ち着いた雰囲気と優しさが 漂います。持ち寄った野菜や山菜の煮物や漬物で卓が にぎわい、舌鼓を打ち笑いが絶えないひととき。
こうした湯谷のみなさんにも支えられ守られながら、 この湯治場が静かに続いていくのだと実感。
この場をお借りして感謝、感謝。

2月になって、寒波が何回かやってくることでしょうが、 春はもうじき。梅のつぼみがほころび、フキノトウが 顔を出すのを待ちながら、お待ちしています。


      (1月31日)


 年の瀬も押し詰まって、やっと本格的な寒波が到来し、 この谷あいも白い世界に変わっています。 昨年の今頃は、1メートル近い大雪と格闘する毎日でした。 それを思うと、今年の冬はいかにも暖冬そのものといった 感じでここまで。紅葉が散り果てて畑や畦の草が枯葉色に 変わっても、何となく暖かい雰囲気だったのです。 昨年の大雪で傷んだ、たきぎ小屋や炭焼き小屋も頑丈にしたり、 道路の上の木の枝やカズラを伐ったり。 湯治場の内外の片づけや、畑の整理も雪の全くないおかげで すんなりと進めることができました。ありがたいこと。

雪が積もると、氷の部屋に入っているようなものですから、 外も家の中もぐんと冷え込んできます。しかも、日中でも 陽射しの届かない谷間故に、ほとんど気温は上がらないまま。 そんな辛い寒さが、年の瀬までなかったことにほっとしている ところでした。

年が明けると2007年。干支のひとつであるイノシシも このあたりでも随分生息しているようです。すっかり害獣の 代表格扱いされていますが、果たしてイノシシが悪いのか、 人間の営みが彼らをその立場に追いやってしまったのか。 里山がしっかりと手入れされ、人が山にどんどん入っていた 昭和の半ば、きちんと棲み分けができていたのでしょう。 この温泉の裏の山には樵(きこり)道や炭焼き道が谷ごとに 尾根に向かって伸びていました。 当時の男の子たちは、そんな道を夢中になって探検しながら、 いつの間にか山の向こう側の集落にたどり着いたり。そこは 昔でいえば、国境を越えた場所(石見から出雲へ・・)。 ただ、そんな山道もすっかり消えてしまい、今はイノシシたちの 通り道になっているのかもしれません。

温泉のわずかな周囲だけでも、少しずつ手入れして、里山の 雰囲気に近づけばと考えているところです。

この雪で本来の冬に戻ったわけですが、幸い冬型は長続きしない 模様とのこと。少しは楽のできる冬になればと祈っています。 これからの湯治は、是非とも冬用タイヤでおいでください。


      (12月29日)


11月のはじめにあった、千原八幡宮の秋祭り。 「しゃぎり」と呼ばれる子供たちのおはやしが 今年はこの地区の集会所からお宮までにぎやかに 練り歩きました。故郷再発見のひとときでした。

秋祭りが終わると、まもなく時雨の季節が始まり、 紅葉も里山を彩っていきます。 温泉のすぐ裏にある大楓もいろづいては、風に散り、 やがて冬の到来を思わせる木枯らしが吹きすさんで、 山陰の山あいは急速に冬へと足取りを早めます。

この夏に、上がり湯を沸かすための薪をしまっておく たきぎ小屋を新しくしました。 冬の大雪で梁がおれたり、小屋自体が傾きかけたり して、やはり冬の温泉を守る大切なたきぎはきちんと 保管する必要があってのこと。 整然と積み上げられた小屋の中をのぞいてみると、 この冬は少しは安心できる気分になりました。

雨の少ない秋が過ぎると大雪の冬を迎えるという ジンクスみたいなものがあるらしいのですが・・。 この冬は、今のところまだ積雪予報は出てません。 何とか、師走の20日過ぎるあたりまでは穏やかに、 と毎日祈るように湯治場を守っているところです。

さて、広島県方面からのお客さまに。 長らくメインルートを国道54号線とお知らせして 来ましたが、最近は三次から旧布野村を経由して 作木に抜ける立派なトンネルが開通したおかげで、 国道375号線も快適なドライブが楽しめます。 大河・江の川がずっと寄り添い、川面に生える紅葉や カヌーやボートの練習風景、「道の駅・大和」での 地元産品のお買い物などなど。 「大和食堂」という知る人ぞ知るイノシシ料理の お店も沿線に。

冬場は54号線・赤名峠が雪の難所にもなるため、 375号線ルートもナビに加えていただければ。

いよいよ、師走。 世間は駆け足で行き来する季節となりますけれども、 こんな中でも、まったく変わらない静かな湯治場で しばしゆるりと瞑想し、癒されてみるのも良し。 これからは風とせせらぎだけの本当に静かな空間。


      (11月30日)


 10月なかばにもなると、朝晩はぐっと冷えてきます。 毎年めぐる季節にあわせて、湯治場の仕事も規則正しく 移っていきます。
 9月くらいまでは、温泉がぬるめで、ゆっくりつかれて さっぱりとした感覚であがれるという大きなメリットが、 秋本番ともなると、逆に上がり際が辛くなります。

 そこで、上がり湯の出番となるのです。
 昨年と同じようなことを書いているのは承知のうえです。 これからの寒さに向かう時期、じっくりと湯治してもらい、 最後に、ほんわりとぬくもって上がっていただきたい。 だから、朝早くから、薪を燃やして時間をかけて沸かすと いう手間がかなりかかっても、これは必要不可欠な事。

 このところ、五右衛門風呂の上がり湯はかなり周知され、 目当てにいらっしゃるお客さまも少なくないのですが、 上がり湯は、あくまで下の源泉の浴槽から出るときに めくもるための補助的なもの。やはりメインは足元から ふつふつと湧き続ける下の浴槽なのです。
 中には、上がり湯と下の浴槽に替わりばんこにつかる 方も見受けられますが、それはこの湯治場では、目的・ 手段からはずれているということをご理解ください。

 さて夏のにぎやかさも遠のいて、夕暮れがあっという間に 訪れる秋。狭い山道を通って来られる間にも、いろいろな 秋を目にされることでしょう。
 10月のはじめまでは、ミズヒキ、ツユクサ、ツリフネソウ、 ゲンノショウコなどの可愛らしい秋の花が道端や畦道に 咲き群れていました。
 中でも雑草の中から小さくてもすっくと立ち上がるヤプラン の淡いピンクの花は、その可憐さと健気さにしばし見とれて しまうほど。
 そんな草たちがだんだんとゆっくりと枯葉色に変わっていき、 裏山のカエデや川端の柿の木の葉が色づいていく。谷あいの 秋は、静かなうえに控えめな彩りで皆様をお迎えします。

 5月から10月までの草刈りもおしまいに。雑草は刈り込み ますが、そっと咲く野の草花を見つけたら、そのまま咲かせて やりたいと思います。来年はもっと多くの花たちが周囲の あちこちで群れ咲くことを願いながら。 そして湯治場はそろそろ冬ごもりの準備に取りかかります。

      (10月13日)


 豪雨に見舞われた7月から一転。8月は雨のない猛暑。 こんな山の中、谷の底でも連日30度を超え蒸し暑いこと。 せっかく育てた畑や庭の花たちも、からから天気に参って しまい、お客様の目を楽しませることができません。 それでも、ムクゲの涼しげな花びらが風に揺れるさまは いよいよ夏の終わりを告げているようです。

お盆の数日間を中心にして、今年も全国からお客様が いらっしゃいました。
昨年は、雑誌や本で千原温泉が紹介されたせいもあって、 もともと狭い駐車場が満杯になり、ご迷惑をおかけした こともありましたが、今年はそれもなく、まず落ち着いた 感じのシーズンとなりました。
実は、今年はじめからの防災工事のついでに、駐車場を 新たに確保したのですが、それもほとんど使われず・・。 そんなものでしょうか。

 夏場はとくに足元から勢いよく湧き出す炭酸ガスが強く 感じます。扇風機を回さないと、たちまちガスが溜まって さらには酸欠状態に。
 静かな湯治場に扇風機の回る音は耳障りかもしれませんが ゆっくりと湯につかるためにはご容赦ください。 よそではなかなか体験できない炭酸ガスの「爆発的湧出」 源泉。湯上がり後はさっぱりとしますよ。

 さて、申し訳ないことをもう一つ。
周囲ではアブが飛びかって、まとわりつき、人を刺します。 湯治場は網戸をはって防いでいますが、持ち帰り用源泉では 蚊取り線香でも間に合わないことが。 どうか、外を歩かれるときはご注意ください。

夕暮れがぐっと早くなり、ヒグラシのもの哀しい鳴き声が 急き立てるように響くと、夏から秋への変わり目。 にぎやかだった湯治場にもまた静けさが戻ってきます。

      (8月24日)


 やっと梅雨明け。長かった梅雨は豪雨となって全国各地で 牙をむいて、この美郷町でも土砂崩れで、おひとりが 亡くなりました。
 千原温泉から山ひとつ隔てたところ。ご家族もまさかと 思われたことと思います。近隣での災害、とくに人命が 失われたことには本当に心が痛みます。

 この湯治場でも、いつもは涼しげに流れるすぐ前の川が 道路に上がらんばかりの出水。濁流が逆巻きながら激しく 流れ下る光景と轟音に、岩が転がる音の不気味さが加わり、 だだ立ちすくむばかりでした。
 幸いにも、道路上の土砂崩れなどはなく、川端の源泉も 一時は水に浸かったものの砂は入りませんでした。
湯治場にも掛け流しの暗渠から、増水した川の水が逆流 しましたが、こんこんと湧き出す湯は変わらず、被害が なくて本当にほっとしているところです。

 東日本は冷夏になりそうな気配ですが、ここらあたりでは 谷底にあっても、まぶしい陽射しとセミしぐれが真夏の 到来を感じさせてくれます。
 千原温泉のぬるめの湯は、夏にはさっぱりとした感触で 肌にやさしく、しかも様々なトラブルに直接的な効能を 発揮してくれます。手前味噌ながら、さすがに有り難い 湯だなと実感する季節なのです。

 7月下旬の土用の丑の日。かつては近隣の方が歩いて 泥落としと避暑にいらっしゃったにぎわいの日。
ちょうど夏休みに入ったばかりで、朝早くから先代の 女将の手伝いをしたり。それも今は遠い昔のよう。

 ところで、湯治場のすぐ奥の古いたきぎ小屋を作り なおした際、傍らの炭焼き窯も保存しておこうという ことになり、常連の大工さんと地元の自治会長さん (建設会社の社長さん)の協力によって、きれいに しっかりと、屋根と周囲を整備できました。
 平成のはじめまで実際に炭を焼いていた窯です。 その炭は、今でも冬場の千原温泉の火鉢に使われて います。

      (8月1日)


 梅雨入り。 周囲の緑が雨に洗われてその色をより濃くしていく時期。 川向かいの崖には、ひっそりといくつかの山あじさい。 うっとうしい梅雨にあっても、自然に囲まれた湯治場では それはそれで、楽しく美しいほっとするような発見が。
 
 この6月はじめに、沸かしていた上がり湯をやめました。 少し早めに切り上げたのですが、差し障りはないようです。 ぬるい湯にもかかわらず、湯上がり後がポカポカしてくると たくさんのお客様がおっしゃるのを聞いていたことも。 休日、多めに入られたときのちょっとした混雑も、これから 秋にかけては心配する必要がないので一息つけます。

 ところで、5月上旬の日曜日朝に中国地方エリアで放送 されたテレビ番組で、ここ美郷町が取り上げられました。 長く地元に住んでいる者にとっても、新鮮な気持ちで観る ことが出来ました。

 町内の真ん中を、ゆったりうねるように流れる江の川に 抱かれ、その流れに鍛えられ、全国レベルの強豪になった 邑智高校カヌー部。
 「山鯨」の異名を持つイノシシ料理を腕利きの料理人が 振る舞う「だいわ食堂」(旧大和村・国道375号線沿い)
 人麻呂・斎藤茂吉にゆかりもある、いにしえからの名湯・ 湯抱温泉。その傍らで窯元ギャラリーを開く森山さん。 奥さんは、島根唯一のプロの漫画家として地元に住み続け、 数々の連載を発表されています。その中には、地元・湯抱を 題材にしたものもあり。で、モデルの男性は地元のおじさん。 おぉっと、思わず喜び、感謝、感動の30分でしたよ。 千原温泉も足元湧出の温泉として紹介してもらいました。

 大森銀山街道も通るこの美郷町。町おこしの一環として、 故郷の歴史、文化、自然を再発見し、残していこうという 試みが始まりました。
 千原温泉においでの際は、県道166号線沿いのそこここ に建てられた小さな案内板に目をやってください。

                      (6月21日)


 4月に入ってから、しばらく気温の低い日が続いたため、 チューリップは、去年より半月ほど開花が遅れてしまい、 そのおかげで、5月の大型連休中も咲き続けてくれました。
 川向こうの庭には、サツキやツツジが咲いていきます。 山藤の花が風に吹かれ、はらはらと散り落ちるのも風情。

 連休中、あちこちからお客様がおいでになり、この山奥も ようやく、長い冬から抜け出したような感じです。 はじめてのお客様の中には、わざわざこの温泉をめざして 遠くからいらっしゃった方もあり、うれしいことです。

 ここは足元から直接湧き出す、全国でも珍しい温泉ですが、 温泉に含まれる、濃く多様な成分による療養、治癒効果を ぜひとも確かめていただけたらと思います。
 もともと、療養専門の湯治場として始まり、近在の方から 口づてに少しずつ効能が広まっていったわけです。
 こうした湯治場の位置づけをこれからも変わらず守って 行くためにも、療養、治癒を目的においでになるお客様を 大切にしていきたいと考えています。

そこで、お願いをひとつ。

 ぬるい湯で1時間くらい浸かっていられる上に、6〜7人で いっぱいになる狭い湯治場です。
そのため、休日などは湯治場が混み合ってしまい、入湯をお待ち いただくことにもなります。 とくに療養、治療でいらっしゃった方には申し訳ないのです。
 それで、入湯時間は1時間以内ということにしております。 皆様のご協力をいただければ喜びます。

 ところで、持ち帰ってからの使い方のひとつに、ペットの 皮膚病などにつけてみるという方法があるそうです。
 ペットの治療に携わる方によると、塗り薬はなめてしまって 効果が薄れるだけでなく、ペットの体にも良くないとのこと。
 ペットとお暮らしの方には、朗報かもしれないですね。 ただし、ここにはペットのお風呂はありませんので、ご自宅に 持ち帰ってお使い下さい。
 
 これからの季節、日中は次第に暖かくなっていきますので、 最後に上がり湯を使わなくても良いくらいになっていきます。
 上がり湯は、寒いときに温まるあくまで補助的なものです。 入らなくても我慢出来る方や、寒く感じない方は、そのまま お上がりください。
 あとからぽかぽかと、全身が内側からぬくもってきます。

                      (5月7日)


 日本列島の南から北へ、あるいは麓から山あいへと、 桜の便りがテレビでも新聞でもにぎやかに伝えられます。 もともと桜にはひときわ関心の高いこの国、さらに昨今は 大ブームの感。これも時代の反映でしょうか。 まぁ桜に限って、このブームは終わる事はなさそうですが。
 
 千原温泉においでになるまでに、美郷町内にはいくつかの 桜の名所があります。
 国道54号線から下って来られる方に。
「九日市のしだれ桜」は、まさに県道いっぱいに覆い被さる ほどの見事なもの。「おおち伝承館」の庭先に位置しており、 駐車場もあります。
 地元の人たちも、満開になる頃には、入れ替わり立ち替わり 見に来られます。夜間はライトアップされ、ロケーションから しても、さらに人気が高まりそうです。
 国道375号線からおいでの方に。
町内浜原地区のお寺の境内に咲く「妙用寺桜」も美しい春の情景。 今年はちょうど満開の4月9日、「創菜料理・ゆるり」がお花見 弁当を用意して、花見の会を催しました。折しもこの日は花曇り。 参加された方は、心ゆくまで堪能されたことでしょう。

 千原八幡宮からJR沢谷駅までの県道にも桜並木が続きます。 地元のみなさんの手入れによって、山里の春を彩る風物にまで 育ちました。この桜を両脇に、千原温泉への山道が始まります。

 千原温泉では、川向こうのソメイヨシノは、雪の重みで太い 枝が元からまた裂き状態に折れてしまい、しだれ桜のように垂れ 下がってしまいました。
 ただ何とか花芽はついていて、今年はそのまま咲いてもらう つもりです。近くから見ると本当に痛々しいのですが。
 駐車場の桜も一部が根元から折れて、広く覆うように咲く 面影はなくなってしまいました。
 それでも、4月半ばからしばらくは花を楽しめます。 風に乗って、花びらが川面に降り注ぐ光景はなかなか壮観です。

 桜が散り果てる頃、今度は畑のチューリップやスイセン、 すずらんなどの球根の花たちがいっせいに咲き始めます。 川沿いの土手の上には芝桜も。そしてツツジやサツキ、 シャクナゲ。小さな花畑もにぎやかな彩りに包まれます。
 山には新緑が芽吹き、やがて盛り上がるように若葉が 空に向かって競いながら伸びていく。
 谷底の湯治場も明るい日差しと風に包まれる季節。
 
 道路の防災工事のついでに、温泉の少し手前に駐車できる スペースを確保してもらいました。
 とくに、5月の大型連休中は、駐車場や周辺の狭い道が 混み合うこともあるかと思います。手前の駐車場もあわせて ご利用くださいませ。

            (4月15日)


長く感じた今年の冬が過ぎ去り、山あいにも春の風。 除雪で道の両脇にうずたかく積まれた雪も消えてしまい、 谷底の湯治場でも、今は花の便りを待つばかりです。

 この冬の大雪のせいで、あちこちに散乱する折れた枝を 片づけたり、雪の重みでへしゃげた庭のシャクナゲや サツキ、ツツジの形を整えたり、花を鉢に植えたり・・。 春らしい仕事が増えてきたのを感じて気持ちも浮き立ち。

 桜のつぼみが少しふくらんで来ると、畑の球根たちが いっせいに顔を出し、陽を受けてどんどん伸びていきます。 道端では、枯れ葉の間からふきのとうがみずみずしい 色で春を告げ、目を凝らすと傍らに春スミレのひとむら。 耳を澄ませば、野鳥たちのさえずりが掛け合いのよう。 おやウグイスも・・あらら音程とリズムがイマイチです。

 1月半ばから始まった防災工事もほとんど完成しました。 景観からすると、コンクリートの壁はちょっと無粋だけど、 何より安全が第一、大切なお客様の通ってこられる道であり、 住む者にとっても唯一の道。とにかく感謝です。
 2ヶ月間、離れた駐車場から歩いていただいたお客様には ご不便をおかけしたことにお詫びとお礼を申し上げます。

人づてに、またこのページや本を見ていらっしゃるお客様が 遠方からも増えつつあります。ありがたいことです。
 温泉のお好きな方ばかりでなく、傷、やけど、肌のトラブル を何とか治したいという切実な思いの方が、時間と費用をかけて おたずねになることには、感謝とともに、この温泉の原点を再度 きちんと確認しなければと、身が引き締まります。
 療養目的が第一の温泉であるという立場で、お役に立てること。 治したい方が十分にこの温泉の効能を吸収され、持ち帰られる。 そのための環境を守り続けていくのが使命とまたまた実感です。
 
■ここで、温泉に入る際のポイントと注意点をいくつか。
 
 ぬるめで30分〜1時間ゆっくりとつかっていただけますが、 トイレが近くなるので、入湯前にはお手洗いをご利用ください。
 
 秋から春には上がり湯を用意していますが、これは、あくまで 上がるときにだけ「ぬくもってもらう」ためのものですので、 最後に一回だけご利用ください。

 料金は、一回の入湯分としていただいております。二回目の 入湯をご希望の方は「部屋休憩」をご利用いただくか、追加の 料金をいただくこともあります。

 いずれも、療養目的でいらっしゃるお客様がじっくりと入湯して いただくためのお願いです。ご協力いただければ喜びます。

 四月になれば、駐車場と川向こうの庭の二本の桜が楽しみです。 雪の重みで裂けてしまい、しだれ桜のようになった庭の桜は 見る度に痛々しいのですが、枝先にはしっかりと花芽をつけて 生命力を感じさせてくれます。
 風に散る桜はまさに花吹雪。それからは、遅い春が爛漫に。

      (3月27日)


山にも田んぼにも畑にもほとんど雪はなくなりました。 雪が消えれば、朝晩の冷え込みもかなり和らぎます。 夜明けが少しずつ早まり、夕暮れはぐっと遅くなって、 深い山の中の谷底にいても、春の息吹が感じられます。 12月からの大雪と寒さも、年が明けて平年並みになった おかげで、春の訪れはそう遅くないかもしれませんね。
 道端にはふきのとうがかわいい芽を出しているはず。
 
 1月半ばから始まった防災工事も順調に進んでいます。 その間、平日は100メートルほど下った臨時駐車場から 歩いておいでいただかなければなりません。
 仮橋から川向こうの畑の中を通って、受付の前の小橋を 再びわたるという、考えてみればめったにできないこと。
 いずれにしても、ご不便をおかけして申し訳ありません。 たくさんの湯を持ち帰られるお客様には、せめて一輪車を 用意して、重たい湯を運んでいただいています。
 3月の下旬までには、この防災工事も終わる予定です。

最近、遠方からのお客様が増えてきていることについては、 以前もお話していますが、温泉好き、温泉巡りの方に加えて、 アトピーや皮膚のトラブルなどにお悩みの方とかも、純粋な 療養目的で全国からおいでになってきているようです。
 そんな方から、「何日か続けて入湯して療養したい」という ご要望をいただくことがあります。

 美郷町では、「ゆるりの里」の民泊が昨春から始まりました。
 町内・上川戸の民家に宿泊。食事はすぐ近くの創菜料理の 店・ゆるり」で。温泉はここ千原温泉と飯南町・加田の湯が 利用できます。
 問い合わせはゆるり・0855−75−0607

 その他の宿泊施設は、「ゴールデンユートピア」、「大和荘」 があります。「美郷町」のホームページをご覧ください。
 また近在では、飯南町・衣掛荘、大田市三瓶町・国民宿舎 「さんべ荘」、かんぽの宿などにお問い合わせください。
 もちろん、おいでになる前に、千原温泉にお電話でお聞きに なれば、詳しくご説明もいたします。

 宿から早めに湯治場に来て、2階の部屋で5時間程度の休憩。 その間、2〜3回の入湯と、のんびり昼寝、窓からの山あいの 風景や川のせせらぎ・・。温泉の効能の実感となかなかの風情。
   日帰りでのそんな湯治が若い方にも広がりつつあります。
 
 気が早いようですが、お雛様を飾ってみました。ちょっと 流行のミニ雛と、古い立ち雛の掛け軸を中心に、そこここで こぢんまりとしたおひな祭りの雰囲気を感じてもらえます。

      (2月28日)


 文字通りの豪雪になりました。中国山地のこの湯治場も 年末からずっと大雪との闘いが続きました。

 思い起こせば、あの38豪雪(1963年)のときには、 1月半ばから2月にかけて、今からは想像を絶する積雪に。 来る日も来る日も雪、雪で、2メートルをはるかに超え、 当時は除雪車が入ることなどなく、朝一番それぞれの家長が カンジキで次の家まで道をあけるのが、仕事だったのです。
 それでも過疎化の始まる以前の時代です、ここのような 山村にも多くの男手があって、集落全体が協力しながら 雪と闘い、つきあい、その冬を乗り越えたのでした。

 全国的に雪害でなくなられた方が、高齢者を中心に増え、 近在でもいらっしゃいます。
 60年代にはなかった、過疎化と高齢化が農山村を覆い、 それが今回の雪害に現れているのは明らかでしょう。
 ただ、近在の地区では、総出でひとり住まいのお年寄り の雪かきの応援が行われたと聞きます。 
 次々と起こる自然災害に対しては、地域コミュニティの 創造、助け合いの精神の復活が何より大切と実感です。

 降る雪は落ち着いたものの、降りやんでからがまた大変。 道路をふさぐ雪崩の頻発、屋根に積もった厚い雪がずっしり と重みを増して建物をつぶしていく。
 この湯治場も、ひさしの梁が折れたり、凍った雪が瓦を 割ったりと、かなりの修理を強いられました。
 常連のお客様の中に大工さんがおられ、いつも気をかけて くださいます。今回もさっそく修繕をお願いしました。 山奥の人手の少ない所、皆様のお力添えに本当に感謝です。
 悲しいのは、駐車場の桜が一本、根本から折れてしまった こと。春、風に舞う桜吹雪も寂しくなってしまいそうです。

 道路の雪はすでに消えており、このところの雪もうっすらと 積もる程度です。朝夕はお気をつけておいでください。

 ところで、おととしの秋に発生した、駐車場すぐ下(しも) の土砂崩れの復旧工事が年明けから始まりました。
 3月半ばまでの2ヶ月間の予定です。その間、とくに平日は 少し離れた臨時の駐車場から歩いていただくことになります。
 ご不便をおかけしますが、湯治場はまったく変わらず営業して おりますので、静かな湯治をお楽しみください。

 2月からは、気分だけでも春になって、おひな様を飾ります。 古い民家ほどのちんまりした湯治場で、かわいらしい春の息吹を 感じていただければ。火鉢の炭はまだまだ必要ですけれど。
          (1月29日)


 この年末に続いた大雪と寒さには、さすがにまいりました。 12月17日からと22日からとの2回の記録的な大寒波で、 多いときは積雪が1メートルにも達したのです。
 この10年間でもみたことのないほどの降りようでした。 おかげで、年末の三連休もほとんど開店休業に近い状態。

 そんな中で、偶然でしょうが、神戸からのお客様が3組ほど。 神戸の温泉と言えば、有馬温泉。他の追随を許さない濃い成分 には、千原温泉も脱帽するしかありません。
 濁り湯が嫌われ、濾過された湯がもてはやされた時代に、 あれだけの湯を持った有馬温泉の客足が遠のいたといいます。
 ここの湯にも「汚い」イメージを持たれた時期がありました。 それでもここ数年、温泉への視点が「何が本物なのか」に変わり、 今は地元の方もこの湯を誇りと考えていただける時代です。

 ところで、雪に埋もれた世界は住んでいる者にもやはり美しい。
 ですが、これだけ積もると、道路が除雪されたからといって 安心はできません。朝夕の路面凍結、雪崩、屋根からの落雪・・。 お客様がいらっしゃる昼間は、気が気ではありません。
 とくに規模の大きな雪崩が発生すると、除雪車が入るまで、完全な 孤立状態になってしまい、お客様が入れないのは仕方ないとしても、 「帰れなくなる」という事態は大変です。
 どうやら、雪と寒さの峠は越えたようで、そのような雪崩の起きる 心配もほとんどなくなりましたが。

 年末の暗渠の掃除、湯つぼの底板をはずしての底ざらえも終わり、 新年を待つばかりになりました。
 2005年は、起こってはならない事件、事故が頻発した年でした。 鉄道の安全神話は完全に崩壊してしまい、幼い子供たちがあちこちで 命を奪われるという憎んでも憎みきれない事件が多発しています。
 そして、とうとう日本の人口が減少に転じるというかつてない事態。 マネーゲームがもてはやされる裏で、誰もが感じている言いようのない 不安。「日本は、世界はどうなるのだろう」と。

 こんな時代だからこそ、地球からの恵み、授かりものに謙虚に感謝し、 お裾分けとして享受させていただくという感覚に立ち返るべきなのでは。
 幸いにも、千原温泉は、まさに地球からの恵みを皆様にお分けしていく という使命をいただいていると思うのです。
 温泉自体がまったく変わらず、治癒効果によってお役に立っていく・・。 湯治場と呼ばれ続けていく、それこそが私たちが守るべきものです。
 「まっとうな湯をまっとうに守る」。
 ささやかに、この大切な使命を受け継いでいきたいと思うばかりです。

 年があけてからは、寒さも一段落して大雪の心配はなさそうです。 06年も癒されにおいでください。ただし雪道タイヤの装備はお忘れなく。
 毎朝、8時までには上がり湯の準備もすませてお待ちしております。 年中無休の鄙びた湯治場は、冬の静けさの中でこそ醍醐味が味わえます。
           (12月30日)


 昨年の12月とはまったく違い、早くも白い世界です。 毎朝、温泉から200メートル下った橋のところまで車で 道をあけ、轍をつける仕事が待っています。
 以前、新雪の積もった年末の朝一番に、遠方から来られた 若いお客様の車が橋のたもとで脱輪、常連さんが車で上って くるまでしばらく立ち往生といった事態が発生。
 そのとき、轍のあとでもあれば、すぐ奥に温泉があることが わかったのに、その方は降りしきる雪の中、途方に暮れて・・。
 せっかく、この湯治場をめざして早朝から来ていただいて、 こんなことがあってはならないと、おおいに反省したのでした。  雪の朝は、道あけを仕事に加えて、けっこう忙しい。
積雪が20センチを超えると、すぐ除雪はしてもらえます。 しかし、おいでになる際は、雪用タイヤでお願いいたします。

 11月半ばに、九州から若い女性2人組が来られました。
秘湯めぐりが趣味のひとつということで、わざわざここを 目当てに日帰りの強行軍だったそうです。午後2時前に着。
 「ぬるめだったけど、湧き出す温泉にそのまま入れることに 感動」「上がるときは少し寒くて、上がり湯がまた熱くて・・」 と焦ったり。「温泉以外でも、落ち着いた雰囲気を楽しめた」 とご評価をいただきました。
 そして「女将さんって豪快ですね」・・本人は「こんなところ にいると、自然そう見えて来るのかしら」
 途中立ち寄った、創菜料理「ゆるり」は、団体のお客で満席。 楽しみにしていたお昼は残念ながら空振りだったとか。
 本当にありがとうございました。

 寒さに震えている師走半ばですが、ますます静かな湯治場に。 ここには、たとえば、くみ上げポンプとかボイラーのたぐいは一切 ないため、いわゆる雑音とは無縁の世界です。
 もしひとりだけでつかる機会があれば、ゆっくり一時間、瞑想の 世界に身をゆだねることができるでしょう。

 さて年末、恒例の湯つぼの底ざらえを行います。底板をはずし、 湯をくみ出します。砂地のあちこちから盛り上がるようにどんどん 湧き出す湯を間近にして、地球の力、温泉力を実感できます。 火山地帯によくある「地獄」に似た光景と思ってください。
 昨年までに底板の取り替えを終えたため、今年はゆとりをもって できそうです。

 山陰地方の山あいに本格的な冬がやって来て、もうじき年の瀬。 今年、全国からおいでになった本物温泉好き、秘湯めぐりの皆様に、 この湯治場が思い出のひとつになったなら、うれしいことです。
 そして、この湯治場はあくまで治療、療養のためにお役に立つ、 そのことを使命にして、守り続けてまいります。
 この一年、お客様とこの湯に心から感謝・・。
                       (12月15日)


 先月の下旬に冬のような冷え込みがあったのと、このあたりは 秋の台風がやってこなかったおかげで、楽しめたのが今年の紅葉。
 9月、温泉のすぐ裏に迫る山の杉や雑木を伐採、カエデだけは 残したところ、これが一本勝負、みごと真っ赤に染まったのです。 最後のカーブを曲がり建物が現れると、その屋根越しにすっくと 立ち、まぁ鮮やかなこと。またまた新しい発見となりました。

 立冬を過ぎ、冬至が近づくにつれ、深い谷底に住む者にとって、 日差しの恩恵もつかの間、だから小春日和はとてもうれしい。 この先、時雨が山をさぁっと駆け下りてきては棚田を濡らして、 もうじき、音もなく山の斜面を滑り降りてくる雪の降り始め。 また、山陰地方の山間部に長い静寂そのものの冬が訪れます。

 この夏以来、四国・九州のお客様が何となく増えているようです。 四国は道後温泉、九州は言わずと知れた日本最大の温泉王国。 遠くから、この千原温泉を目当てにしてわざわざおいでになる・・。 みなさんいずれも、たくさんの温泉を訪ねて熱心な方ばかりです。
 最近は、温泉に詳しい方からネット上で丁寧なご紹介をいただき、 しかも「感動」「驚き」「変わらずに」という評価も少なからず。 すなおにありがたいな、と思うとともに、この湯への自負と愛着が 今までそうだったように、これからも強くなっていきそうです。

 毎日、朝8時までには、上がり湯を湧かしてお待ちしております。 晩秋、霧と見まがうほど、薪を燃やした煙がゆっくりと立ちのぼり、 山峡をたゆたうさまは、水墨画の情景に似た風情を満喫できます。 また平日の朝は、訪れる人はほぼ常連の方。のんびりと世間話したり、 湯の特長に耳を傾けたり、湯治場ならではのひとときを過ごせます。

 「通販生活」最新号で、「足元湧出温泉全国30湯」のひとつに 取り上げていただきました。温泉チャンピオン・郡司勇さんのご推薦。 郡司さんにはその著書でも過分な評価を頂戴し、光栄の至りです。 この場をお借りして、心から感謝申し上げます。
                      (11月15日)



 狭く曲がりくねった山奥の一本道をおそるおそる運転しながら やっとたどり着き、「この先に本当にあるのかと心配だった」と、 笑いながら話されるお客様が少なくありません。 はじめての方は、確かにそう感じてしまう山奥の湯治場。

 そんな気持ちを少しでも和らげようと、温泉の周囲の草刈りと、 花の手入れは春から秋にかけての大切な仕事のひとつです。

 つい最近、気づいたことですが・・。
 温泉を取り巻く風景を、下から順に見上げていくと・・。
渓流、花畑、庭園、棚田、里山、空。そして草むした小径。
 いずれもが本当にちんまりしたものばかりですが、ここには 山間の懐かしい風景が変わらず残されていると知りました。
 草を定期的に刈ることによって、地面近くの小さな野の花が 日差しを浴びて元気になり、可憐な花をつけます。 今の季節、フウロ、みずひき、つりふね草、ヤブランなどなど。 道ばたには秋咲きのスミレも。

 いっぽう、鉢植えの花たちはこれから冬支度。コリウスとかの カラーリーフが主役に変わる時期です。 チューリップの球根の植え付けもそろそろでしょうか。

 今月から上がり湯を再開しています。季節の移ろいを感じるとき。 上がり湯を湧かす薪の燃える匂いで、タイムスリップできるかも。 五右衛門風呂を設置した温泉はときおり聞きますが、上がり湯の ために薪で湧かす温泉は、さて他にあるのでしょうか。
 電気やガスの加熱も、温泉が濃すぎるため機器がすぐ傷むとのこと で、以前考えたものの断念。
 結局、手間暇をかけ懐かしい風情を残すことになったというわけです。
 なお少々の肌寒さを我慢すれば、上がり湯のお世話になる必要は ないことも付け加えておきます。

 秋の日はつるべ落とし。谷底の湯治場はあっという間に日暮れです。 遠方からのお客様はできるだけ早めにおいでくださいませ。
                      (10月14日)


 台風による暴風と大雨の被害にあわれた皆様には心からお見舞い 申し上げます。ここ中国地方ではとくに広島県南部で大きな被害が 出ました。千原温泉のお客様の中でも多くの方がお見えになる地域、 一日も早い復旧をお祈りいたします。

 9月半ばを過ぎ、彼岸入りしたと言うのに、まだ残暑は山あいにも とどまっているようで、昼間は汗ばむくらいの陽気が続いています。
 連休中は、入湯の待ち時間が出るほどでした。わざわざおいでいた だいたのにお待たせしてすみません。7〜8人ほどでいっぱいになる 狭い湯つぼです。ぬるめの湯はとても心地よく体にしみこんでいくし、 いつまでも浸かっていたい気持ちもよくわかりますね。
 それでも、秋風とともにこうした混雑も遠くなり、静かな湯治場に 帰っていくでしょう。じっくりと温泉力を堪能できなかったお客様は、 秋以降にまたおいでいただければと思います。とりわけ遠くからの お客様にはお詫びいたします。

ところで、朗報をひとつ。
 ここから1時間ほどの石見銀山(いわみぎんざん)が世界遺産への 登録申請を果たし、いよいよ世界文化遺産への道が見えてきました。
 かつてこの石見銀山から瀬戸内・尾道に銀を運んだ石見銀山街道は、 このあたりでは県道166号線に姿を変えていますが、狭い山道を 一里ばかり入ったところに千原温泉はひっそりと湧き続けています。
 そういうわけで、石見銀山が世界的な評価をいただくことには、 言ってみれば、身内の喜びのような感じがしているのです。
 また、石見銀山から日本海側に下ったところには温泉津(ゆのつ)の 港があり、そこにも古くから効能豊かな温泉津温泉が佇んでいます。

 あらためて地図を開くと、三瓶山、石見銀山の周囲には、三瓶、 小屋原、池田、湯抱(ゆがかえ)、温泉津など、源泉や掛け流しの 個性的でこだわりの湯が集まっていることに気づきます。
 そのいずれもが穏やかで鄙びた雰囲気を醸し、たとえば温泉王国と 言われる九州とは一足違った泉質と風情でお迎えしてくれます。

 朝夕の気温が15℃を切るまでもう間近。また上がり湯を準備する季節 がやって来ました。源泉をそのまま五右衛門風呂にくみ上げ、薪を焚いて ゆっくりとわかします。
 煙突から立ち上る煙、薪の燃える香ばしい匂い。ゆらゆらと湯治場を 包み込む柔らかな湯気。時には煙が目にしみたりして・・。
 そんな昔からまったく変わらない温泉のありようにひたりながら、 肌に心地よくあたる、湧き出した瞬間の湯の刺激を楽しんでください。
                         (9月21日)


 今年のお盆はずっと蒸し暑さが続きます。それでさすがにこの辺鄙な 山奥の温泉にも、癒しを求めて多くのお客様がおいでになりました。 でも、周囲の山々ではツクツクホーシとヒグラシが鳴いています。

 最近の傾向として感じるのは、
 その1、全国各地からネットや雑誌をごらんになって訪れるお客様が 増えてきていること。事前の情報をお持ちになっているだけにここが 療養専門だとご存じ、きちんとしたマナーの方が多い。
 その2、若い方でもレジャー気分でおいでなるというより、何らかの 治療を求めて来られていること。持ち帰りのペットボトルを自分で ご用意のうえ、はじめて来られる若いグループも増えました。
 その3、はじめておいでになるご夫婦の場合、たいていは奥様の方が じっくりと浸かるため、先に上がったご主人が暇をもてあましてしまう。 時には奥様を呼びに行くのを女将が頼まれることも。

 夏はもう少しですが、こんなわけで9月の秋分の日くらいまでは涼を 求め、癒しを求めてお客様の多い時期が続きます。
 とくに土曜、休日の昼前後から3時過ぎは入湯待ちをお願いすることも ありますので、ゆっくりと温泉に浸かりたい方は、平日や早朝、夕方に おいで頂ければ。

 湯治場の役割について思うこと。
ここ千原温泉は、泉質といい足元から直接湧き出す新鮮さといい、濃い成分 とあわせ、全国どこに出しても恥ずかしくない温泉です。 ここにいる者でさえ、今でも温泉そのものの様々な効き目をお客様自身から お聞きしたりして、いまだに新しい発見、驚きがあるのです。
 この「治癒、療養」の役割を、これからもずっと担っていけるよう 気持ちを引き締めているところです。

 もう一つ加えてみるならば。
最近になって思うのは、周囲のロケーションとうまくとけ込んで いることも、癒しの効果を高めているのではないかと。 目の前に小さな渓流がありせせらぎの音が絶え間なく聞こえること。 自然に耳に入り込んでくる優しい音です。もろちんカジカの声も。 周囲は切り立つような山々ですが、一面の緑が包み込むように。 ちんまりとした棚田があって、古い庭があり、花の咲く畑があり、 真夏でもひんやりとする谷水が流れ落ちている。
 決して観光地になるような風景ではありませんが、それだけに 落ち着いた風情で文字通りの「湯治」を楽しめるのです。
                         (8月18日)




泉質
■湯治場
ナトリウム−塩化物・硫酸塩泉
(旧:含二酸化炭素-ナトリウム
 塩化物・炭酸水素塩泉)

泉温
34℃(湯治用浴場)
入湯 大人一回  500円
子供一回  300円
タオル200円
部屋休憩(5時間内)1200円/人

持ち帰り用温泉
100円/Lでお分けします。
ペットボトル 300円
持ち帰ってからの使い方

 

住所 〒699-4711 島根県美郷町千原1070 TEL/FAX 0855-76-0334
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